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目と耳のライディングバックナンバー

◆第296回 フラメンコの新しい流れ(29.May.2013)

 マリア・パヘス舞踏団の東京公演(Bunkamuraオーチャードホール、2013年5月19日午後3時開演)を観た。マリア・パヘス舞踏団を観るのは2008年以来、二度目だ。2011年にも来日しているが、残念ながらそのときは観ていない。
 2008年に観たときは、とてもオーソドックスで、過剰な演出のないフラメンコという印象を受けた。ただ、チェロが入っているのは珍しかった。
 今回は印象が対象的と言っていいほど異なり、冒険的で新しいと感じた。フレッド・マルティンズ(ブラジルのミュージシャン)の存在が大きかったからかもしれない。この公演『ユートピア』のためにマルティンズが用意したオリジナル曲はフラメンコではなく、MPB(ブラジルのポピュラーミュージックのこと)だった。サンバを基調とした曲で、フラメンコを踊ったのには本当に驚いた。
 さまざまなことに挑戦し、新しい血を入れることで、フラメンコの伝統が絶やされずに次世代へ受け継がれているのかもしれない。新しい血を入れるとフラメンコの血が薄まってしまうのではないかと思うが、実際はそうではない。フラメンコはバロック時代の舞踏曲もルーツも持っているくらいだから、もともと懐が深いのだろう。
 しかし、それもこれもしっかりした基本(型)があるから可能なのであって、思いつきの域を出ない「コラボレーション」とは明らかに違う。基本(型)をマスターしているからこそ、それを破ろうとする挑戦に意味があるのだ。
 というような具合に、現在進行形のフラメンコは、さまざまなことを考えるきっかけを与えてくれた。
 なお、マリア・パヘスたっての希望で、東日本大震災の被災県である岩手県での公演も行なわれた(北上市さくらホール、5月22日)。これもできれば観たかったが、あいにく都合がつかなかった。
〈このごろの斎藤純〉
〇取材を兼ねて、本州(尾道)と四国(今治)を結ぶ「しまなみ海道サイクリング」をしてきた。瀬戸内海の風土を肌で感じるのに自転車の旅ほどふさわしいものはないと思った。
〇昨年につづいて、今年も東日本復興支援サイクリング「サイクルエイドジャパン」に出場する。昨年は盛岡・花巻間を走破したが、今年は花巻・一関間に挑戦する。
『ダウン・トゥ・ゼン・レフト』/ボズ・スキャッグスを聴きながら

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