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目と耳のライディングバックナンバー

◆第314回  クリーブランド美術館展を観て考えた (24.Feb.2014)

 日本美術の名品が里帰りをした『クリーブランド美術館展蠇名画でたどる日本の美』(東京国立博物館2014年1月15日~ 2014年2月23日)は、「これが日本に残っていたら、国宝とか重要文化財などに指定されていただろうな」と複雑な思いを抱かされた。
 世界でも屈指といわれるクリーブランド美術館の東洋美術コレクションは、1952年にクリーブランド美術館に赴任し、1958年から館長も務めたシャーマン・リーの功績だ。
 東洋美術研究家のシャーマン・リーは、太平洋戦争後にGHQの民間情報教育局美術記念物課の一員として日本で活動している。爆撃などによって文化財が受けた被害状況を調べることが目的だった。
 もうひとつ、それまで日本ではとかく秘匿されがちだった文化財を、国民共有の財産として広く公開していくための道筋をつけることも重要な任務だったという。ある意味で、我々がさまざまな芸術作品を享受できるのは、シャーマン・リーらの働きのおかげだといっていいのかもしれない。
 シャーマン・リーらの功績はそれだけではない。
 戦後、華族制度の廃止によって経済的に行き詰まった華族から大量の美術品が市場に溢れた。これが重要な美術品の海外流出のきっかけとなった。おそらく、シャーマン・リーはGHQ時代の人脈や調査活動での経験を活かして、それらをコレクションしたに違いない。それによって、優れた美術品があちこちに散逸することがある程度まぬがれた。
 それに、シャーマン・リーは東洋専門家として体系的なコレクションをした。個人の好みで蒐集されたもの(たとえば、プライス・コレクションやファインバーグ・コレクション)とは、その点が大きく異なる。
 だから、クリーブランド美術館の日本美術コレクションを観れば、日本美術の大きな流れが一望できる。
 クリーブランド美術館以外にもメトロポリタン美術館はもちろんのこと、シアトル美術館、フーリア美術館、ギメ美術館、大英博物館などが日本美術の優れたコレクションで知られている。フーリア美術館のコレクションなどはぜひ観てみたいものだ。
 ちなみに、大英博物館では大規模な「春画」の展覧会が昨年開催されたものの、日本では受け入れ先がなく、春画の里帰りはまだ実現していない。ものがものだけに難しいのはわかるが、日本の美術作品が海外では堂々と公開され、大変な人気を博しているのに、本家の日本で観ることができないのは奇妙な話だ。
〈このごろの斎藤純〉
〇夕方5時ごろ、外がまだ明るいことに気がついた。寒い日が続いているが、春が近づいてきているのを感じる。
〇腎臓に結石ができやすい体質で、30代のころから悩まされてきたが、いい薬があって、このところ自然に排出している。自転車シーズンが来る前に片づけてしまいたいと思っている。
アリーサ(アレサ・フランクリン)・イン・パリを聴きながら

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