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目と耳のライディングバックナンバー

◆第330回 猫(の美術作品)にまみれる (20.Oct.2014)

 私は自他ともに認める猫好きだ。私の持ち物には猫のシールがべたべた貼ってあるし(もちろん、この原稿を書いているパソコンにも)、食器類も猫の図柄だ(大の男が、とよく笑われるけれど)。猫の絵を集めた展覧会や猫の写真展があれば、万難を排して東へ西へと出かけていくし、私が芸術監督をつとめている岩手町立石神の丘美術館でも2011年に『猫の画家 高橋行雄展』を開催した。
 私はオートバイも好きだが、オートバイ乗りには猫好きが多いようだ。東京から来たオートバイの仲間が、盛岡はよく猫を見る街だという。猫が暮らしやすい街は、洋の東西を問わず、人も暮らしやすいと決まっている。
 猫好きの作家も多く、猫を題材にした作品がたくさん出ている。親しい作家の中では、内館牧子さんと高橋克彦さんが猫好きで知られている。
 高橋克彦さんは愛猫を亡くされた後、喪失感のあまり執筆できなくなった。結局、愛猫の思い出が染みついた仕事部屋を別の部屋に移すことで解決なさったという。
 私も7年前に愛猫を亡くしている。私の腕の中で息を引き取ったときのことを思いだすと、今も胸が苦しくなり、涙が溢れてくる。だから、そのことは書かない。
 今年は東京渋谷の松涛美術館で『ねこ・猫・ネコ』展(前期・後期)があったし、盛岡のパルクアベニューカワトクでは岩合光昭写真展『ねこ』があった。どちらも猫三昧、美術品となった猫をたっぷりと愛でることができ、猫好きにとってはたまらない年だった。 さらに、『招き猫亭コレクション 猫まみれ展』が秋田県立近代美術館(秋田県横手市)で開催されている(11月24日まで)。これが今年の「猫もの」の締めくくりに相応しい、充実した内容の展覧会だった。
 まず、その量に驚かされた。なにしろ、日本の浮世絵から現代の作家まで古今東西の「猫作品」が絵画・彫刻合わせて300点あまりも展示されているのだ。もちろん、質も高い。このすべてが「招き猫亭」と称する個人コレクターの40年にわたるコレクションだというからまた驚く。本展では秋田県立近代美術館が収蔵している藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品も特別展示され、鼻を、じゃない、華を添えていた。
 本展にも驚かされたが、それにも増して驚いたのが秋田県立近代美術館のある「秋田ふるさと村」の賑わいぶりだ。ここには、星空探険館スペーシア、遊具がいっぱいのワンダーキャッスル、秋田の工芸品を集めた工芸展示館、秋田料理館(レストラン)、秋田県立近代美術館などが集積している。ここに来れば、子どもから大人まで一日中楽しめるとあって、たくさんの人で賑わっていた。
 秋田にはおいしいものが多い。きりたんぽといった伝統的な料理から横手焼きそばに代表されるB級グルメまで、ここで食べられるのも嬉しい。
 猫の美術品に囲まれて過ごした至福のひとときと合わせ、「秋田ふるさと村」で私も充実した一日を過ごすことができた。
〈このごろの斎藤純〉
〇オートバイを買い換えた。修理などの維持費にお金のかかるBMWからホンダにした。私が30歳のときに初めて手に入れたオートバイがホンダだったから、ホンダに戻ったわけだ。そして、おそらくこれが私のオートバイ・ライフにおける最後のオートバイになるだろう。
ベートーヴェン:交響曲第8番を聴きながら

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