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目と耳のライディングバックナンバー

◆第332回 久々に弦楽合奏を聴く (17.Nov.2014)

 私は盛岡の弦楽合奏団バディヌリの定期公演を楽しみにしていたのだが、現在、活動を休止しているため、弦楽合奏を聴く機会がなくなってしまった。
 それもあって、このコンサートは心待ちにしていた。現代のヴィルトゥオーゾ朝枝信彦さんが率いる「朝枝信彦室内管弦楽団」盛岡公演である。
【日時】11月13日(木)午後7時開演
【会場】岩手県民会館中ホール
【朝枝信彦室内管弦楽団】
朝枝信彦(ヴァイオリン、コンサートマスター)
浅野智久(ヴァイオリン)
小笠原薫(ヴァイオリン)
村上和邦(ヴァイオリン)
鈴木弘一(ヴァイオリン)
五十嵐貴子(ヴァイオリン)
吉田爽子(ヴァイオリン)
小畠茂隆(ヴィオラ)
村松龍(ヴィオラ)
三宅進(チェロ)
宮坂拡志(チェロ)
井戸田善之(コントラバス)
長谷川恭一(チェンバロ)
【プログラム】
第一部
(1)ヴィヴァルディ:「四季」
(2)同 : 4つのヴァイオリンのための協奏曲
第二部
(3)アイネ・クライネ・ナハトムジーク
アンコール
(4)モーツァルト:「音楽の冗談」第三楽章
(5)バッハ:G線上のアリア
 盛岡市出身の鈴木弘一さん(NHK交響楽団)を中心とする音楽家たちによって、毎年、さまざまなコンサートが開催されてきた。今回もその一環のコンサートだ。朝枝さんは、2009年に予定していたベートーヴェンの弦楽四重奏コンサートの直前に体調を崩したため(このコンサートは、急遽、メンバーを代えて実現している)、久しぶりの盛岡公演だ。
 朝枝さんは正統派の伝統を受け継ぐヴィルトゥオーゾとして知る人ぞ知る方だ。今回もその神髄に触れることができた。実は私も実行委員の一人なので身内褒めにならないようにしたいが、やっぱりいいものはいいという気持ちだ。
 (1)は「もうさんざん聴き飽きた」という先入観をみごとにひっくりかえしてくれた。こんなにいい曲だったのか、と再認識したようなしだいだ。歌舞伎の見栄を張るような箇所あり、泣かせどころあり、とてもドラマチックな音楽だ(それがいやらしいという意見もわからないではないが)。名曲を名曲たらしめたのは、やはり演奏がそれだけ素晴らしかったからだろう(こうなると卵が先か鶏が先かという水掛け論になりそうだ)。
 (2)ではベテランに混ざって、東京芸術大学大学院修士過程古楽科に在籍している吉田爽子さん(盛岡市出身)もソロを担当した。堂々たる演奏で、将来がとても楽しみだ。
 (3)はゆっくりめのテンポで演奏された。終演後、吉田爽子さんに「遅くて弾きにくくなかったですか」と訊いたら、やはり難しかったと苦笑していた。演奏家にとってこの曲は早いテンポでさくさく弾くほうが楽なのだ。朝枝さんは少人数の弦楽合奏団の軽快さと響きを生かすべく、ゆっくりめのテンポにしたのだろう。大人数のオーケストラがあのテンポで演奏したら破綻する。
 上記では触れていないが、他のメンバーも盛岡に何度も足を運んでくださっていて、馴染みの方たちだった。鈴木弘一さんのおかげで盛岡にいながらにして、これだけレベルの高い音楽を聴くことができる。改めて感謝したい。
 その鈴木さんも昨日の出来が今までで一番よかった。よけいなことを書くようだが、友人なのでお許しいただきたい。
〈このごろの斎藤純〉
○良性発作性目眩症が再発した。今のところ軽度なので日常生活に大きな支障はないが、このところ健康状態がよかっただけに精神的にがっくりきている。
○雪の季節が近づくと、これから4カ月もの間、自転車にもオートバイにも乗れなくなるから憂鬱になったものだが、今年はいつもと違い、雪を待ち焦がれている。スキーを始めるからだ。
○十代のころにパラレルクリスチャニアなどひととおりのことをやったとはいえ、30数年ぶりだから、「再開」というよりは「始める」がふさわしいだろう。なにしろ、クリスチャニアが死語だと聴いて驚いているような始末だ。
○というわけで、目眩を早く治さないとスキーにも行けない。
イースト・ウェスト:バターフィールドブルーズバンドを聴きながら

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