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目と耳のライディングバックナンバー

◆第339回 岩手の芸術の今を知る (9.Mar.2015)

 岩手県立美術館で『アートフェスタいわて2014』が開催中だ(3月22日まで)。
 この展覧会は、2014年秋に開催された第67回岩手芸術祭美術展の受賞(芸術祭賞、優秀賞、奨励賞)作品に加え、日本画、洋画、版画、彫刻、工芸、書道、写真、デザイン、現代美術、水墨画の10部門から推薦された美術家たちの作品100点と、平成25年度岩手県美術選奨受賞作家5人の作品28点が展示されている。
 見知っている作家の作品もあれば、初めて出会ったものもある。総じて見応えがあり、時間を忘れて見入った。中には、私が芸術監督をつとめている岩手町立石神の丘美術館で展覧会を予定している作家の近作もあり、とても参考になった。
 こういう場で私は「岩手らしさ」を探そうとする癖がある。今どき、もはや地域性などというものは幻想に近いと理解しているつもりでも、頭のどこかでそれを求めてしまうのだ。
 結論からいえば、やはり地域性を感じとることはほとんどない。 そのかわり、世代による作風の違いを感じることができた。これは前々から薄々感じていたことでもあるのだが、いつか整理して報告したいと思っている。
 「岩手らしさ」について続けると、2階の常設展へ行けば、それを感じることができる。その多くは大正から昭和にかけての作品だ。このあたりのこともじっくり考えていきたいと思っている。
 ところで、先日、仙台のカメイ美術館で『宮城県芸術協会 絵画部門 選ばれし作品の軌跡ー平成の芸術祭賞13年ー(平成元~13年)』展を観てきた。ここでも私は宮城らしさを探して、それを見つけることができなかったという経験をしている。
 ついでにメモとして記しておくと、宮城県の芸術祭賞に選出された作品を見るかぎりでは、岩手県に比べて保守的な傾向が強いように思った。ま、これは作家全体の傾向というよりも芸術祭そのものの体質なのだろうけれど。
 美術館というところは、しばしば「過去(先人)の遺産」に重きが置かれがちだ。けれども、「今」を伝えることも美術館の大切な機能だし、それを後の世代に受け継いでいく役割も担っている。この展覧会はそれを実現している。
 私たち鑑賞者も、ともすると「今を生きる美術」よりも過去の遺産にしがみつきがちだ。現在進行形の美術に触れることができる、こういう機会を私たちはもっと活かさなければならない。
〈このごろの斎藤純〉
○今年は春が早いと思った矢先にドカ雪に見舞われた。例年なら、この時期に雪が降ると「もうこりごり」と沈鬱な気持ちになったものだが、今シーズンは「またスキーに行けるな」と前向きに捉えている。健康面でスキーを再開したのだが、このように精神衛生上も有効だ。
ハウエルズ:弦楽合奏曲集を聴きながら

ブログ:〈続〉流れる雲を友に