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目と耳のライディングバックナンバー

◆第374回 北緯40°を旅する(22.Aug.2016)

 私が芸術監督を仰せつかっている石神の丘美術館では『斎藤純のぶらり北緯40°』展を開催中だ(9月11日まで)。
 北緯40度線は岩手県の太平洋側の普代村から、日本海側の男鹿市まで12の自治体を横断している。本展はそれら12市町村をオートバイで旅し、それぞれの地で感じたことを自由に綴ったエッセイを元に構成されている。エッセイは400字詰め原稿用紙にして50枚の長さになった(このエッセイを収めた小冊子は企画展入館料一般300円に含まれている)。
 北緯40度線上を移動するという以外に決まったテーマはなかった。その結果、ルートもあっちへぶらり、こっちにぶらりという旅になった。「ぶらり北緯40歩」は学芸員が付けてくれたタイトルだ。
 気ままな旅であっても、終わってみるとひとつのキーワードが朧げながら浮かび上がってきた。それはスローライフである。私が旅した北緯40度の市町村はどこも少子高齢化という問題を抱えていた。その一方で、多様な地方文化を色濃く感じることもできた。それらの一端をこの企画展で伝えることができればと思っている。
 展示は私のエッセイを元に二人の学芸員が視覚化してくれた。そうとうな苦労をかけてしまった。観光案内でもタウンガイドでもなく、「北緯40度の地域を一人のオートバイ乗りがどのように眺めたのか」という内容になった。ある意味、石神の丘美術館でなければできない展示だと思う。
 中でも、8つの自治体が設置している北緯40度モニュメントのミニチュア模型は一見の価値がある。これは写真を元に、3D(3次元)プリンターで制作したものだ。この制作にあたっては盛岡情報ビジネス専門学校に協力していただいた。盛岡情報ビジネス専門学校のおかげで、石神の丘美術館で北緯40度モニュメントを一挙に紹介することができた。記して感謝申し上げたい。
 もうひとつ、男鹿半島のナマハゲと普代村のスネカの装束と面を展示している。北緯40度に位置する東西の両地域に似たような風習が伝わっているのは、実に興味深い。
 石神の丘美術館の芸術監督に就任するまで、私は北緯40度を意識したことがなかった。ところが、実際には以前から北緯40度と関わりを持ってきたことに気がついた。それは出版物(『夜の森番たち』や『ツーンリグ・ライフ』など)となって残っている。
 石神の丘美術館で私の名を冠した企画展は2009年4月に芸術監督就任記念として開催した『斎藤純芸術監督就任記念 印象・いわて』展以来、7年ぶりとなる。したがって、心中、密かに芸術監督就任7周年記念という思いもある。
 本展を通じて、何かひとつでも発見、あるいは再発見をしていただければそれに勝る喜びはない。
 石神の丘美術館の企画展の恒例で、産直とレストランとのコラボレーション企画もあります。産直では北緯40度のご当地サイダーを販売している。レストランでは「ぶっかけ北緯40°うどん」を期間限定1日15食限定で提供している。「ぶっかけ北緯40°うどん」はシェフの創意と熱意の賜物で、とてもおいしい(850円というお得な価格設定も嬉しい)。ぜひお試しいただきたい。
〈このごろの斎藤純〉

○全日本エレキ音楽祭(一関文化センターにて8月20日~21日)に初出場を果たし、これで私の今夏の重要イベントはすべて無事に終えた。暑い夏だったが、終わってみると短い夏でもあった。


いそしぎ(サウンドトラック)を聴きながら