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目と耳のライディングバックナンバー

◆第382回 ギターを聴く その12(19.Dec.2016)


 待望のギター・コンサートを聴いてきた。荘村清志と福田進一のデュオ・コンサートである(キャラホール、2016年12月9日午後7時開演)。
 前回の「ギターを聴く」が 第231回 だからずいぶん間が空いてしまった。
 もちろん、ギターを全然聴いていなかったわけではない。いわてジャズでラリー・カールトンを聴いたり、日野皓正さんのライヴで加藤一平さんのギタープレイに衝撃を受けるなどしているのだ。
 もっとも、クラシックギターのコンサートに限れば、2014年9月にミロシュ(この連載では取り上げなかった)を聴いて以来だから、ずいぶん久しぶりだ。
 日本を代表する2人のギタリストのデュオは、プログラムも下記の通り実に凝ったもので、聞き応えがあった。
 ドイツ・カンマーフィルハーニモー管弦楽団は1987年に正式発足した若いオーケストラで、2004年にパーヴォを芸術監督に迎えて以後、めきめきと頭角をあらわし、クラシック音楽界を揺るがす存在となっている。その関係はカラヤンとベルリン・フィル、いや、サイモン・ラトルとバーミンガム市交響楽団を連想させる。この歴史的な共演を、盛岡で生で聴くことができた。こんなに嬉しいことはない。
【第1部】
作者不詳:ルネサンス期の2つの小品(デゥリュリーの和音/ナイチンゲール)
T.アルビノーニ~R.ジャゾット(A.ラゴヤ編):アダージョ
F.ソル:2人の友 作品41 (序奏 主題と変奏 マズルカ)
F.サイ:リキアの王女
【第2部】
久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe
E.モリコーネ(鈴木大介編):ニュー・シネマ・パラダイス
S.マイヤース(鈴木大介編):カヴァティーナ
F.タレガ(J.サグレラス編):アルハンブラの思い出
E.グラナドス(荘村清志編):オリエンタル-『スペイン舞曲集』より
F.プーランク(福田進一編):エディット・ピアフを讃えて-『15の即興曲』より
M.ファリャ(E.ブホール編):スペイン舞曲-オペラ『はかなき人生』より
【アンコール】
ハーライン(江部賢一編曲):星に願いを
カレリ:ロンド
ルイギ(鈴木大介編曲):ラ・ヴィ・アン・ローズ
 ファジル・サイの「リキアの王女」と久石譲のShaking Anxiety and Dreamy Globeはどちらも私好みの曲で、これを聴けたのは最高の贈り物だった。ことに後者については失礼ながら意外だった。というのも、なんとミニマムミュージックなのである。わかりやすい、優しい旋律を書くことにかけて久石譲が天才的であることは今さら言うまでもないが、このようにモダンでちょっと前衛的な作品を書くとは!
 多くの編曲を手がけている鈴木大介もギターの名手中の名手だけあって、お馴染みの曲もまるで初めて聴く曲のような新鮮な響きに満ちていた。鈴木大介の編曲には二人のギタリストに対する敬意も感じられた(だから、演奏家にとってはとても難しい作品となっている)。
 お二人のギターの音色の違い(荘村清志はクラシックで暖かな響き、福田進一はやや硬質でモダンな響き)も楽しめた。それにしても、お二人とも多彩なトーンの持ち主で、一台のギターだとは信じられないほどだった。
 曲の間のトークも愉快だった。しばしば「これは〇〇から楽譜が出版されています」というコメントもあり、満員の客席にアマチュアギタリストが多いことを意識してなのか、ユニークだと思った。アマチュアギタリストが多かったからなのか、客席の反応も素晴らしかった。また、キャラホールの響きはギターコンサートに向いている。あれだけ大きなホールでありながら、マイク(PA)を使わなかった。
 ひとつ残念だったのは、それぞれのソロを聴けなかったことだ。ことに荘村清志は武満徹作品のスペシャリストだし、福田進一は吉松隆のスペシャリストである。一曲ずつ聴きたかった。  今後もキャラホールの特質を活かして、定期的にクラシックギターのコンサートが開催されること期待している。
 ところで、私は20年近く前にパリのオルセー美術館で荘村さんをお見かけし、「ファンです」と声をかけたことがある。
「こちらにはコンサートで?」と訊くと、「いえ、プライベートで……」と、荘村さんはいやな顔ひとつせず応じてくださった。小さな、しかし、私にとっては大切な思い出だ。
〈このごろの斎藤純〉
〇盛岡文士劇の本番を成功裏に終えることができた。疲れがなかなか取れないし、東京公演(1月28日、29日)もひかえていて気を抜けない。なお、私が出演した『みちのく平泉 秀衡と義経』は1月3日午前9時からIBC岩手放送で放送される予定だ(他局の宣伝で申し訳ありません!)。
〇文士劇を終えてホッとする間もなく、今月はもうひとつ大きなイベントがある。この場を借りてお知らせさせてください。
■THE JADOWS『師走だ! エレキだ! GO! GO! GO!』
昨年9月、もりげきライヴ第249回で華々しいデビューを飾ったザ・ジャドウズが、もりげきライヴに帰ってきます。
デビュー以来、サウンドスペース・アルディラでのリサイタルを成功させ、各種イベント出演で人気を博し、さらには第7回全日本エレキ音楽祭に初出演するなど着実に歩んできました。
1年余りにわたって鍛えられ、成長したザ・ジャドウズが、お馴染みのザ・ベンチャーズやザ・シャドウズなどのエレキインスト、グループサウンズなどの懐かしい昭和のサウンドをお届けします。
どうぞお楽しみください。
【メンバー】斎藤純(ギター)、吉田亘(ギター)、田村曙光(ベース)、澤井泰董(ドラムス)
【ゲスト】石倉かよこ(ボーカル)、阪下肇之(キーボード)、齊藤悦郎(テナーサックス)

■2016年12月21日午後7時開演(午後6時30分開場)
■タウンホール(盛岡劇場地下一階)
■前売り券1000円(当日1200円)
インコグニート:ライヴ・イン・ロンドンを聴きながら