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目と耳のライディングバックナンバー

◆第401回 初めてのジュリー(沢田研二)ライブ(10.Oct.2017)

 沢田研二『50周年記念LIVE 2017-2018』に行ってきた(北上市文化交流センターさくらホール/10月5日午後6時開演)。私はザ・タイガースのころからのファン(決して熱烈なファンではなかったが)なので、ジュリーの愛称をここでは使わせていただく。
 会場のさくらホールは満席(立ち見席まで用意されていた)。客席の年齢層は民謡のコンサートと同じくらい高くて、私など若いほうの部類に入りそう。しかし、侮ってはならない。物凄い熱気だったのだ。
 実は私、ジュリーのコンサートは初体験である。
 コンサートはまずジュリー自身が編集したという映像で始まった。ザ・タイガース時代からソロになってからのとても美しいジュリーの姿を「これでもか」というほど見せた後に、現状を見せる(ご存じだと思うので、あえて詳細は省く)。若いころのジュリーの姿に会場のあちこちから溜息や感嘆の声が聞こえていたのだが、ここで笑い声が起こる。自虐的というか、超越しているというか。いや、世間の目など意に介さないということか。
 最後の曲の前にジュリーは「還暦をすぎて、あまり食べるなとか太りすぎだとか言われたくない。お米が大好きなんだから。みんなもお米を食べましょう」と客席を沸かせた。若いころは痩せの大食いと言われていたそうだ。食べても食べてもガリガリに痩せていた。それだけハードな仕事をなさっていたということかもしれない。
 容姿の変貌はともかく、その歌声とカリスマ性は今なお健在だ。ザ・タイガース時代の「君だけに愛を」、そして「時の過ぎゆくままに」や「勝手にしやがれ」など70年代を席巻したヒット曲の数々を、デビュー50周年にちなんで50曲、ほぼ休みなしにいっきに歌う。しかも、ギター(紫山和彦)、ベース(依知川真一)、キーボード(大山泰輝)、ドラムス(GRACE)というコンパクトなバンドであれだけ聴かせるのだから、やはり凄いものだ。ボーカリストとしての底力を否応なく見せつけられたように思う。ただ、PAが今ひとつだったため、せっかくのボーカルを台無しにしていた(具体的に言うと、後半になってボーカルの輪郭がぼやけ、歌詞が聞き取れなくなった。全体を通してドラムスのボリュームも低かった)
 曲の数が多いため、ワンコーラスずつしか歌わないのが残念だった。もっとも、フルサイズで歌ったら3時間半くらいになるだろうから、客席の我々も大変なことになる(山下達郎はそれをやっているわけだが)。
 とはいえ、驚いたことに最初から最後まで客席は総立ちだった(山下達郎コンサートとて坐って聴けるのに)。
 実は正直なところ、あまり期待していなかったのだが、事前に聴いておいたCDを遥かに凌ぐパワフルな演奏に圧倒された。そして、このバンドの要であるフィリップ・セスがとてもよかった。
 もちろん、私もずっとスタンディングで、ときに声援を送りながら(さすがに「ジュリー!」と叫んだりはしませんでしたけど)、名曲の数々を堪能した。
 改めて考えてみると、フォークブームが起きて「音楽」に目覚める前に、私はグループサウンズに熱中していた。ザ・タイガースがデビューしたのは私が10歳のときの1967年だった。箒を持ってベンチャーズの真似事をしていたころのことだ。
 ザ・タイガースの活動期間は4年しかない。その4年間で普通の人の20年分の経験をザ・タイガースはしている。当時のザ・タイガースの人気ぶりはAKB48など足元にも及ばないほどだった、と言っても、今の若い人にはピンとこないかもしれない。
 その後、ソロ歌手になってからも日本のポップスシーンを常にリードしてきた。ここ20年くらいはテレビから遠ざかっているが、ご本人が「テレビは美しいころのジュリーの映像が流れればいい。今はこうしてコンサートでみなさんと会えるのが楽しみ」とおっしゃっていた。
 このコンサートツアーは今年7月から来年1月にかけて全国66カ所をまわる(さくらホールは28カ所目)。加山雄三といい、沢田研二といい、往年の大スターが元気に、現役で活躍しているのは嬉しい。
 それに加えて、来年は古希を迎えるというジュリーとほぼ同年代のお客さんが2時間以上、総立ちで応援する姿も感動的だった。
〈このごろの斎藤純〉
〇盛岡文士劇の稽古が始まっている。今年の演目はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の飛鳥時代版だ。この難しい仕事をやってのけたのは、いつもの道又力氏である。稽古はまだ始まったばかりだが、見応えのあるお芝居になりそうだ。
○盛岡文士劇のチケットは発売とほぼ同時に売り切れるという人気ぶりなので、チケットが手に入りにくいというお叱りの声をいつもいただく(これについては本当に心苦しく思っています)。我々、出演者でさえチケット入手が難しいのだが、発売に先立つ先行予約ハガキ応募には、100枚を用意していたところに800通の応募があったという。いやはや、なんとも…
クリエイティブ・ジャズ・トリオ:月の光を聴きながら