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目と耳のライディングバックナンバー

◆第410回 地獄からのロックに酔う(26.Feb.2018)

 盛岡劇場タウンホールの恒例イベントである「もりげきライヴVol.278『Kiss+s 地獄の第二分団』」に行ってきた(2月21日水曜日、午後7時開演)。
 Kiss+s(きっすっすと読む)は1980年代に一世を風靡し、紆余曲折はあったものの今なお現役で活動しているロックバンドKissのパロディバンドであり、トリビュートバンドである。本家にならってメイクもするし、コスチュームにも力が入っている。
 本家Kissはビートルズと同じ4人組だが、Kiss+sは5人という違いがある。一応、メンバー名を記しておく。
 サイモン・オ・ジーン、ポール・オォ・スマイリー、ギミック・シンガー、ポール・スタンサム、ハヨ・セイヤーと、いずれも本家のメンバー名をもじった名前だ。仮面(メイク)の下のプロフィールはあえて詳らかにしないが、県外にもその名が知られている腕達者たちだということは明記しておきたい。
 Kiss+sがもりげきライヴに登場するのは昨年につづいて2度目だ(私は昨年も観ている。)。それで、『第二分団』。これも、Kissの『地獄の軍団』というアルバム名のもじりだ。分団は説明の必要があるまい。
 相変わらずのステージ・パフォーマンスに大い笑った。メンバーが手押しの台車に乗って移動するのは、ワイヤーワークで宙を舞うパフォーマンスのつもり。炎の形をした赤いライトは、有名な火を吹くパフォーマンスのつもり。というわけで、Kiss+sのステージ・パフォーマンスは「見立て」の上に成り立っているから、観る側でそれを理解できなければ何のことかわからない。もっとも、このライヴに集まる方々はそんなことは百も承知だから心配はない。
 これらのパフォーマンスは一歩間違うと単なる「おフザケ」になってしまうが、そこは腕達者のバンドだけあって、「音は本物(あるいはそれ以上を目指している)」だ。もともとKissはルックスこそ奇抜なものの、そのサウンドはポップなハードロックだ。テクニックが備わっていないと、そのサウンドは再現できない。そういう面でも満足感を味わうことのできるライヴだった。来年も「地獄の第三分団」をやってほしいと希望しておく。
 ところで、もりげきライブは来年には300回を迎えようとしている。月1回だから、25年間もつづいている長寿イベントだ。
 アマチュアコンサートは会場費、PA代、チラシやチケットの手配など負担が大きく、なかなか実現できない。もりげきライブの特徴は、アマチュアのミュージシャンに負担をかけない形で開催できる仕組みができていることだ。ただし、事前の審査を通らないと出演できない(ある一定の集客数を見込める実力が要求される)。
 運営は盛岡劇場のスタッフと実行委員会が担っている。これも特筆すべきことだろう。これまで大きなトラブルもなくつづいてきたのは、ひとえに実行委員会の尽力の賜物といえる。私も何度か出演させていただいているが、この場を借りて改めて感謝したい。
〈このごろの斎藤純〉
〇私が芸術監督をつとめている岩手町立石神の丘美術館の年度末を飾るビッグイベント『バレンタインイルミネーション 冬のお花畑』を成功裏に終えて、一息ついているところだ。来年度も興味を持ってもらえそうな企画を用意しているので大いに期待していただきたい。
ビル・スミスのフォーク・ジャズを聴きながら

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